よくわかる人工知能

よくわかる人工知能を読みました。


著者の清水亮さんは、電脳空間カウボーイズというラジオをやっていて、自分は多分大学生の時くらいからこれをずっと聴いてます。この人のものの考え方が好きで、すごく共感できるのです。電脳空間カウボーイズの中で話される話題は、ちょうど自分の知らない技術寄りでかつビジネス寄りの話が多く、いつも興味深く聴かせてもらっています。そういえば、東京に来てから、一度ゲンロンカフェでの収録を見に行ったこともありました。
あと、UEIという会社の社長でもあります。


で、そんな清水亮さんの本なのですが、この本の存在自体も電脳空間カウボーイズ内の宣伝で知り、Kindle版を即購入。

この本は一言で言うとやばかったですww
久しぶりに本を読んでいてテンションが上がりました。


この本では、清水亮さんが人工知能業界のキーマンへのインタビューを通して、人工知能業界の最先端の人たちは何を考えているのかを明らかにしていきます。
個人的に、前半の内容は電脳空間カウボーイズ内や松尾豊さんの講演で聞いた内容と重複している部分もあり比較的新しい内容は少なかったのですが、後半がやばかったです。



まず、受動意識説の慶應大学の前野隆司さんのインタビュー。ここでは、意識をプログラミングできるかという議題において、意識とは、環境からインプットされる情報を圧縮して記憶しておくために、情報を物語化するための装置にすぎないという。完全な自由意志が常に存在しているというのは幻想で、外界からうける影響に人間の意識そのものが影響されている可能性を語っています。人間が作り出した科学という枠組みの中で、どこまで人間の意識を解明出来るのかは不明ですが、現実問題それよりも先に人工知能に意識らしき機能をつけてしまえるようになるかもしれないと思ってしまいました。さらには、もう人工知能だけの話ではないのですが、人間の意識における集団的無意識や外界からの一種の霊的なアフォーダンスについても何らかの見知が得られると面白いなと、読みながら個人的に妄想が膨らんでいました。
人間の意識について、寝ているときや酔っ払っているときなど意識に程度が存在することは明らかであり、動物にだって程度は違えど意識はありそう。というのは直感とそこまで違ってなく、おかしな話ではないと思う。一方で、環境からのインプット情報を物語的に記憶していない虫については、意識を持っていないだろうという話は新しい視点で妙に納得してしまいました。
ただ、本中では、楽観的にこのまま人工知能の研究が進めば意識の機能が実現できるかもねという話だったのですが、それにはなんとなくまだいくつかブレイクスルーが必要な気もしています。その一つが量子コンピュータだと個人的には考えています。



あとは、何と言ってもPEZYという会社の社長である齊藤元章さんのインタビュー。この人は一番ぶっとんでいて、自分でシンギュラリティを早く起こすために世界で最も電力効率の良いスパコンを作っている人。
たしかに、今の科学の進歩は偶然の発見の寄与が大きく、進歩が遅い。まさに、生物学的進化がDNAの突然変異に依存しているから人間に進化するまでに何億年もかかったように、科学の進歩もほとんど盲目的な科学実験から運の良かった天才たちが努力を重ね、エッセンスを抽出して科学の功績が生まれている。この本を読むまでそんな発想をしたことがなかったが、言われてみれば確かに、人類よりもはるかに頭の良い人工知能からはそんな感じに見えるかもしれない。N対Nの関係性を簡単に見つけ予測を立てて実証するサイクルを高速で回せる世の中になれば、不老であれ星間移動であれ、加速度的に技術が進歩し何でもできるようになってしまうだろう。
その後の世界を想像することは困難ですが、まずはそれまでの世界で自分が何ができるのかをちゃんと考えなければと、焦りと興奮を覚えながら本を読み終えました。


1つ不自然だったのは、この本の中に量子コンピュータの話が出てこなかったこと。
PEZYなんかは、電力効率の良いスパコンなんて絶対量子コンピュータの話題は避けて通れないと思ったのですが、わかりにくくなるので割愛してるのかなと思ったり。


なので、次はこんな本をポチって読んでます。

量子コンピュータが人工知能を加速する

量子コンピュータが人工知能を加速する