確率の定義

統計学入門 (基礎統計学)

統計学入門 (基礎統計学)



統計学入門 - サイバースイッチ
こちらの記事でも紹介した統計学入門の教科書を読んでいるのですが、教科書というか読み物として面白いです。
以下、4章「確率」のメモ。

確率の定義

ラプラスの定義

確率の概念は、最初、ラプラスによって体系的にまとめられた。
試行の根元事象が全部でN個あり、それらが同様に確からしいと仮定する。このとき、それが出れば1つの事象Aが起こるような事象の数がR個あれば、事象Aの確率は {P(A)=R/N} と定義される。
この定義で重要なのは、各事象の発生が同様に確からしいと仮定することが必要となっていることである。

頻度説

頻度説は、上記のラプラスの定義から1歩進んで、確率を、無限回試行したときの発生頻度と等しくなるものだとした。
定義上、同様に確からしいという仮定が不要になり、例えば、歪んで、ある目が出る確率が {1/6} でなくなったサイコロにも確率を定義出来るようになった。ただ、その確率を知るためには、無限回試行しないと正確な値がわからないため、この場合には、極限への収束に現実の裏付けが不足している。

コルモゴロフの定義(公理主義的定義)

数学者コルモゴロフは、確率の公理主義的定義を行った。これにより、確率論を数学的に構成し、公理に基づいた体系的な議論をすることが可能になる。
確率論の公理は下記の3つからなる。これに合うなら、どのような数も確率として扱うことが出来る。

  1. 全ての事象Aに対して {0 \leqq P(A)\leqq 1}
  2. {P(\Omega)=1}
  3. 互いに排反な事象 {A_1,A_2,A_3 \cdots} に対して

  {P(A_1 \cup A_2 \cup A_3 \cup \cdots) = P(A_1)+P(A_2)+P(A_3)+\cdots}

 
これで、確率とは何かという問いに対して、一応の答えができるようになったが、実際の問題に対してある事象がおきる実際の確率というものが、有限回数の観測でしか求められないという点に変わりはない。そこは、さらに進んでベイズ的確率論によって現実に則した定義ができるようになる。
ただ、このコルモゴロフの定義の時点でようやく確率を数学的対象として扱うことができるようになり、公理から定理を導き、確率論における様々な議論が出来るようになった。
 
 
 
確率というもの何を表すのか、我々は日常的に確率という概念に触れているため、簡単な確率の議論ならあまり深く考えなくとも出来てしまうのですが、その裏には、ラプラスの「同様に確からしい」という仮定や、頻度説における「無限回試行した場合の実現頻度である」という仮定を暗に想定していることが多く、それに気づかなかったり、区別した議論ができてない場合には、往々にして話が噛み合ない。
ここらへん、各考え方自体は当たり前と感じる内容が多いのですが、だからこそ、気をつけていないとその議論で仮定されていることを見失ってしまいます。
歴史的な背景を知っておくと、ここらへんの意識が変わりそうな気がしました。